監督:チャン・イーモウ
脚本:ユイ・ホア(原作者)、ルー・ウェイ
出演:グォ・ヨウ、コン・リー
公開:1994年
上映時間:122分
無理やり一行あらすじ
国共内戦、大躍進、文化大革命の激動の時代を生きる1つの家族の物語。
感想(ネタバレあり)
人生で何本出会えるかわからないレベルの名作でした。
ここ最近観た映画のなかでは群を抜いて強い余韻をもたらしてくれました。
この物語を分析すると、以前レビューした冲方丁さん「偶然を生きる」に提唱されている、「人生の経験の種類」にうまくフィットできると思います。
まず第二の経験(社会的価値、イデオロギー、大きな物語)
「活きる」ではこれが何度も崩壊します。
この映画で挙げると
による出来事です。
次に第三の経験(神話的物語の信仰)
これは文化大革命の時代の毛沢東信仰によるもの。妄信的に人々は彼を信仰し、少しでも反革命的とみなしたら弾圧します。
そして第一の経験(直感的)
これは家族です。大事な家族がいます。力強く生きる、支え合っていきる家族がいます。この第一の経験こそが第二の経験が何度崩壊しても福貴、家珍を絶望させない最たる理由です。
最後に第四の経験(人工的物語)
福貴がかつて息子や孫に語った「羊の次は牛、牛の次は……」の物語です。また「後世は今よりずっとよくなる」と語っています。このような希望の未来を描き語ることこそ第四の経験です。
ストーリーはテンポよく進み、ヒトが激動の時代の大きな渦にのみこまれていく姿がよく描かれています。2時間なのに恐ろしく濃度が高かったです。
部屋の中に立ち込めるお湯の湯気、餃子を詰めるシーン、縁談がまとまりそうで嬉しそうな福貴と家珍、泣きながら何度も両親を振り返る鳳霞、心に残る場面が多すぎます。
随所に挟まれる影絵芝居が残酷で重苦しい雰囲気に対して良いアクセントになっています。新鮮でどこか懐かしい感覚、そして胡弓の音色はいつも儚い。
福貴と息子有慶が追いかけっこして家族や町の人々が笑うシーンを観て「この映画は自分にとって特別なものになる気がする」と予感すら与えてくれました。
有慶のお墓参りで家珍、福貴が涙を流すシーンは演技を超えて本気で泣いているのがわかります。
本当に言葉にできない様々な感情が浮かんできます。
泣ける、とか単純な言葉で形容したくない作品です。ただ、それを一言では伝えられないからこそ芸術作品だと思います。
他作品だと「この世界の片隅に」というアニメに近い気がします。
この映画に出会えて良かった、そう思える至高の一品です。
DVDとブルーレイが4000円と結構高いけど、何かあったときのために手元に置きたい。。
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