役に立ったこと
私にとって役に立った情報を自分の言葉でまとめてみる。
本書の目的は、作家志望者がそうした最初の着想を——散歩中にふとよみがえった記憶、電車の中で耳にした議論、夢でみた不思議な場面などを——しっかりした構成を持つ作品に育てるお手伝いをすることである。
冒頭で上記の文章が書かれている通り、本書は古典作品から名作映画に至るまでの「物語」がどのようなプロットの方法論に当てはまるのか理解することができる。
プロット主導とキャラクター主導の物語の違いが気になっていたので、2ページ目にそれについて書かれていて有益でした。
あらゆるドラマは対立である。キャラクターが場面を引っ張るか、場面がキャラクターを引っ張るかのどちらかである。
プロット主導の物語は、読者を自然に惹きつけながらテンポよく進んでいく。
例:ダ・ヴィンチ・コード、愛の続き
キャラクター主導の物語は、登場人物の置かれた環境がどんなものであれ、その人物の成長に焦点をあわせる。
ビルドゥングスロマンとも呼ぶ。
例:ライ麦畑でつかまえて、異邦人
物語を作る人にすすめる10の質問がとても役に立った。これは実践で使いたい。
- これは誰の物語か?
- 彼らには何が必要か?
- きっかけの出来事はなにか?
- 主人公の望みはなにか?
- 立ちふさがる障害はなにか?
- 何が問題で、そこに何がかかっているのか?
- なぜそれを気にするのか?
- 主人公は何を学ぶのか?
- それをなぜ、どのように学ぶのか?
- 物語はどう終わるのか?
私は大学で民俗学を専攻していました。そこで柳田國男の遠野物語を知り、これらの話は現代に伝わる日本作品のアーキタイプになっていると教えてもらいました。それが本書では以下のように違う形で同じ説明をしていました。
おとぎ話は、集合的無意識のプロセスの最も純粋で最も単純な表現である。
それらは最も単純で、最もむきだしで、最も簡潔な形でアーキタイプを表している。
つまり、おとぎ話の意味は、物語という糸でつなぎ合わされたモチーフの総体の中に含まれている。
集合的無意識の話は、ユング、フロイトだけでなくシュールレアリスムの芸術からも学ぶことがあった。
クリストファー・ブッカーの「7つのプロット」が本書で一番役に立った情報だった。基本的なプロットは下記の7つに当てはめることができるという。自分が今書こうとしている物語が7つの構造のうちのどれに適しているか試してみるのも面白いかもしれない。いずれもひとりの中心的な主人公のメタナラティブ(大きな物語)である。
1.怪物退治(怪獣との闘い)
メドゥーサ、ミノタウロス、ゴリアテ、ドラキュラ、ナヴァロンの要塞、キングコング、タワーリング・インフェルノ、ターミネーター、ジョーズ、スター・ウォーズ、アバター
ゴジラ、魔界転生、ゼイラム、ガンバの冒険
2. 貧富から富豪へ(失うものはなにもない)
アラジン、みにくいアヒルの子、シンデレラ、ユースフとズライハ、大逆転、黄金狂時代、レベッカ、ピグマリオン
バビロンの大富豪、わらしべ長者、少林サッカー
3.航海と帰還(うさぎの穴に落ちて、もどってくる)
ピーターパン、不思議の国のアリス、オズの魔法使い、ライオンと魔女、ガリバー旅行記、タイムマシン、風と共に去りぬ、ロビンソン・クルーソー、蝿の王、回想のブライズヘッド
十二国記、ふしぎ遊戯、浦島太郎
4.探求(たどる旅路のその中身)
ロビンフッドの冒険、インディ・ジョーンズ、プリンセス・ブライド・ストーリー、ファインディング・ニモ、オー・ブラザー!、もののけ姫、フィッシャー・キング、パイレーツ・オブ・カリビアン
グランディア、エターナルアルカディア、Lunar2、天空の城ラピュタ、未来少年コナン、ワンピース
5.悲劇(起こったことは元に戻せない)
アゴティゴネー、アベラールとエロイーズ、ロミオとジュリエット、ジュリアス・シーザー、リア王、フェードル、ドン・ジョヴァンニ、カルメン、トリスタンとイゾルデ、アンナ・カレーニナ、テス、ヘッダ・カブラー、嵐が丘、フランケシュタイン、グレート・ギャツビー、俺たちに明日はない、タイタニック
デスノート、エルフェンリート、
6.喜劇(いっときの大騒ぎ)
高慢と偏見、アニマル・ハウス、ホット・ファズ、フォー・ウェディング、モンティ・パイソン、ボートの三人男、真面目が肝心、我輩はカモである、お熱いのがお好き、フォルティ・タワーズ
7.再生(暗闇から立ち上がる)
眠れる森の美女、白雪姫、カエルの王子様、美女と野獣、雪の女王、クリスマスキャロル、罪と罰、サイラス・マーナー、秘密の花園、フィデリオ、ペール・ギュント
時間軸を活用する方法
時系列に則って作者目線の事実を陳列させた表を作ってみる。物語で照らす内容は様々である。ミステリーで使える。
感想
本書を読みながら違うことが頭を満たしていった。
それは物語を作るとき、「作りたい」と思った今しかチャンスがないということだ。物語は作家の脳内の流動的なイメージが重要な気がする。
温めてある作品がある、というがそれは日常的に書いているはずのものだ。過去に残した書き途中の自信作、というものは存在しない。
後回しにすると、そのときに描いた物語はもうなくなってしまう。泡粒がはじけるように。
長い年月を経て刊行した十二国記の最新刊が、前作と雰囲気が明らかに変わっていたように。
プロットをいくら構築しても、作者が変化すると、物語もやはり変化する。それを意識的に戒めておかないと元々の狙いや理想がずれたり「惰性」で書いてしまう恐れすら出てくる。これは物語だけでなく、他のあらゆる創作にも適用できる考えだと思う。鉄は熱いうちに打て、です。
物語のつむぎ方入門は、入門というだけあって古典的な基本を抑える内容になっている。現代ならではの価値観や発想はまた別問題にあり、そこをうまく融合させないと作品としての価値は作れないと思った。
この本の良いところは、古典の名作を取り上げているので、物語の構造をわかりやすく理解できるところにある。
実践しながら繰り返し読むことで、それがより自分の血肉となるはず。その最初のハードルがとても低く設定されているところもとても良かった。本書にかかれているプロットの構造は自身の作品分析にも役立つと思う。
装丁のタイトルがキラキラしていてダサかったのが少し残念でした。
まとめ
- プロットの基本構造は大きく7つに分けられる
- ミステリーなどは真の時間軸と物語として語られる時間軸の2つを用意するのが近道
古典的なファンタジー小説を書くヒトにオススメしたい本
作家=人間であるため、物語は断続的ではなく流動的である
時代に適した文体や表現がある。現代はテンポ早めが求められる
個人的評価 | |
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タメになった | |
読みやすさ |