作者:金庸
翻訳:岡崎由美
初版:1967年(原作)
原題:秘曲 笑傲江湖
全7巻
いよいよ最終巻、笑傲江湖第7巻のレビューとなります。
感想(ネタバレあり)
ついに完走しました。
一度読み始めると、続きが気になって止まりません。7巻まで特急快速睡眠不足でした。
もう既に最初から読み直したいくらい楽しい作品です。
笑傲江湖は金庸の代表作と言っても過言ではありません。
圧倒的なキャラクター
キャラクターが魅力的、個性的です。物語自体もミステリーのように謎が謎を呼び、複線を気持ちよく回収していきます。
登場人物に様々な表情があり、初登場時と終盤では印象が全く違います。
以下ネタバレ注意
・令狐冲
主人公なのに初登場が回想のなかで死んだ男として登場。主人公だと知るのは一巻の終盤から
・仁盈盈
↓
実は魔教のお姫様で超はにかみ屋のツンデレ美少女でした
・林平之
・岳不群
・田伯光
・労徳諾
・東方不敗
ぱっと思いついただけでも、これだけ変化に富んだキャラが登場します。ほかにも桃谷六仙、殺人名医平一指先生、梅荘の達人、藍鳳凰など個性あふれるキャラクターがたくさん登場します。
でも、結局令狐冲が好きです。
謹慎され、濡れ衣を着られ、破門を言い渡され、愛していた小姉妹を寝取られても……。最後まで令狐冲は華山派の思い出や育ててもらった恩を忘れませんでした。
普段はお調子者で酒や冗談が大好きで人を笑顔にすることを生きがいとしている、そしていざというときは頼れる兄貴的存在です。幾たび裏切られ、打ちひしがれても、優しい想いを捨てきれない令狐冲の性根の暖かさに心を打たれてしまいます。
笑傲江湖の意味
正と邪が対立し、血で血を洗う江湖の世界において、権力争いや政治的弾圧などのしがらみを傲然(ごうぜん)と笑い飛ばす。という意味らしいです。
笑傲江湖を作曲したのは衝山派:劉正風と魔教の長老:曲洋です。お互いは対立する環境におかれながらも、音楽で心を通わした唯一無二の友でした。二人の演奏は入神の域に達していて、死の間際に笑傲江湖を完成させてその楽譜を令狐冲に託します。
主人公の令狐冲は名門正派、華山派の一番弟子です。ヒロインの仁盈盈は魔教のお姫様。どちらも束縛を受けるのを嫌い、自由と愛情を重んじるタイプの人物です。
劉正風と曲洋は殺されてしまいましたが、令狐冲と仁盈盈は最終的に結ばれます。そして結婚式で笑傲江湖を演奏するのです。
作者の金庸が笑傲江湖を執筆していた時期は文化大革命の真っ只中だったはず。「笑傲江湖」から読み取れる意味は物語の大筋そのものとも言えますが、文化大革命や激動の時代における弾圧、自由と個性の開放についても、この物語の人間模様から得られるものがあるかもしれません。
ともあれ、令狐冲の生き様は一生支持されてほしいです。
個人的評価 | 100点 |
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物語 | |
文章(翻訳) |
神雕侠侶と比較して
同じ作家の作品:神雕侠侶も100点を取りました。(当ブログ初)
笑傲江湖も100点ですが、違いがあります。
笑傲江湖は全体を通してずっと面白く、右肩上がりに話に引き込まれる作品でした。
神雕侠侶は笑傲江湖ほどずっと面白い感覚が続くわけではないのですが、(特に情花関連の公孫止編あたりはイマイチ)最終巻の瞬間最大風速は今まで読んだ物語の追随を許さないくらい素晴らしいものでした。
話自体は神雕侠侶のほうが好きです。だけど、万人におすすめしたい、面白いよ!って言いたくなる作品は笑傲江湖です。
読了までにかかった時間:合計約30時間