作者:金庸
翻訳:岡崎由美
初版:1967年(原作)
原題:秘曲 笑傲江湖
全7巻
前回に続き第二巻のレビューとなります。
劉正風、曲洋長老から秘伝の楽譜「笑傲江湖」を託された令狐冲。舞台は崋山派に移ります。
儀林を助けるためにひと暴れをした令狐冲は不謹慎な発言や行動(どれも止むを得ずとったもの)に揚げ足を取られるような形で一年間面壁の謹慎処分を受けます。
毎日崖の上に料理を運んできてくれる両想いの岳霊珊と仲睦まじいやりとりをするも、徐々に美少年の林平之にその存在を上書きされてしまいます。
やるせない思いで日々を過ごすうちに、あるきっかけで壁の奥に隠された部屋を発見します。その壁に描かれた壁画には五嶽剣派の技を尽く破る技法が描かれていました。
そして、そんな魔教の長老たちが苦心して編み出した技の数々のさらに上をいく無敵の剣法「独孤九剣」を崋山派の師叔(師匠のさらに師匠)風清揚が姿を現し、令狐冲に手ほどきをします。
崋山派は武林の中でも正統派の名門であり、その総帥を担う岳不群は君子剣と呼ばれ、人品、実力を兼ね備えています。令狐冲の育ての親でもあり、絶技「紫霞功」を会得しています。そしてさらにその上を行く無敵の剣法「独孤九剣」を人と交わることを捨てた世捨て人の風清揚が令狐冲に手ほどきします。風清揚は岳不群のことを「小僧」「弱き者」と軽く侮蔑できるレベルの仙人クラスの達人なのです。
感想(ネタバレあり)
この時点で令狐冲は現在でいう「なろう系」主人公のような無敵の剣技を手に入れます。まだ二巻ですよ……?!
独孤九剣のルーツは伝説で語られる存在「独孤求敗」が編み出した無敵の剣法です。独孤求敗は自分が負けることを求めて闘いを続けるが、ついにその願いは叶わなかったという別次元の存在です。私の大好きな神雕俠侶の楊過も独孤求敗の剣とその技の一部、そして内功を受け継ぎます。
なろう系と違うところは、強さが必ずしも戦いの勝利に結びつくわけではないことです。それと、性格がクール系でもなければ、達観したような俯瞰系でもなく、熱い男なのが魅力的です。どちらかと言えば令狐冲は女性よりも男にモテるタイプですね。
令狐冲の一途なところ本当に好きです。
風清揚先生の「うつけ者めが!」ってセリフが何度も出てきて笑えます。翻訳では年をとったキャラはみんな「〜じゃ」「〜だわい」と典型的な老人口調で喋りますが、原作の中国語ではどのような仕様になっているのか気になるところです。金庸作品はお年寄り大活躍の話が多いので、じいさんばあさんの言葉使いがみんなこの調子だとなんだかなって思います。社長英雄伝の黄薬師は流石に年寄り口調ではなかったですが。
第三巻へ続く。
読了までにかかった時間:約4時間