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秘曲 笑傲江湖 第五巻 レビュー

基本情報

作者:金庸

翻訳:岡崎由美

初版:1967年(原作)

原題:秘曲 笑傲江湖

全7巻

前回に続き第五巻のレビューとなります。

吸星大法を身に着けた令狐冲は、囲碁狂いの内力を取り込み、身をすり替えて梅荘から脱出する。そのまま向門天、仁我行の行方が気になり探すことに。(だまし討されたのに心配しています)

向門天、仁我行と再開を果たした令狐冲は、復活宴のなか、日月神教(魔教)に入ることをすすめられる。条件は吸星大法の副作用を克服する方法と仁盈盈との婚姻、そして将来は教主にとの約束だった。

しかし、まだ華山派への思いが捨てきれず、令狐冲は日月神教に入ることを断り一人放浪の旅に出る。ここでも令狐冲は華山派を殲滅するのはやめてほしい、と仁我行に説得をしていた。様々な濡衣を着せられ、破門を受けたとしても、育ててもらった恩を捨てきれない良心が彼の心に強く残っているのです。

旅をするうちに恒山派一行が闇討ちされる未来を知る。そこで令狐冲は将軍の身なりに変装をして、バカで愉快なおじさんを演じながら恒山派の人々を救っていきます。

定間師太が亡くなり、さらに定逸、総帥の定静までもが悪辣な手口で殺されてしまいます。定静師太は令狐冲に看取られるとき「恒山派の総帥になってほしい」と願いを託し、情に篤く仁義に尊い令狐冲はそれを承諾します。

そして恒山派を引き連れて歩くうち、ある酒場で仁盈盈が自分のために少林寺に監禁されていることを知ります。己の身をなげうって人を救ってきた令狐冲でしたが、誰かに命と引き換えに救われたのは初めてのことでした。

仁盈盈の深い愛情と行為に胸を打たれた令狐冲は、少林寺に赴き彼女を救おうと決意します。

恒山派+魔教の豪傑たちを引き連れて少林寺にやってきた一行でしたが、そこには思わぬ罠が巡らされており……。

感想(ネタバレあり)

令狐冲、ここでまさかの尼さん達(恒山派)の総帥に……!

第五巻を大きく整理すると

・少林寺を襲撃し、逆に罠にかかってしまう話

・日月神教+令狐冲 vs 五嶽剣派+少林寺、武当のドリームマッチ

でわけられます。

仁我行が五嶽剣派+少林寺、武当の総帥たちと対立したときに尊敬している人間を三名あげます。

1.自分を見事奸計にはめた東方不敗

2.少林寺の方證大師

3.華山派の総帥

ここで華山派の総帥ときいて周りが「君子剣、岳不群のことを散々馬鹿にしてきたけど認めているではないか」との声があがります。しかし、仁我行は

「それはもちろん独孤九剣を使う風清楊先生に決まっている。こやつ(岳不群)は……ふん、遠く及ばん」

のような口ぶりで風清楊を持ち上げ、岳不群を貶します。聞いてて痛快でした。

恒山派を狙った連中は魔教の身なりをしていますが、実は同じ五嶽剣派の嵩山派です。嵩山派の行いは非人道的です。そして辟邪剣譜を我が物にしようとする、さらなる悪役がいるという……。

戦闘面では方証大師、冲虚道人、左冷禅vs仁行我、向問天、仁盈盈(令狐冲)という組み合わせのドリームマッチがあります。これは少年漫画的な盛り上がりでワクワクしました。ほとんど仁我行が戦いますが……。

なかでも、方證大師が使った少林寺の如来連掌拳?みたいな技がかっこよかったです。

2の掌が4になり、4が8になり、8が16、32、64、128、と放っておくと掌がどんどん増えていく恐ろしい掌法。カンフーハッスルの元ネタになっているのかもしれません。

しかも方證大師は内力の扱いも至高の域にあって、仁我行の吸星大法を己の内力を自在に収斂させることで吸収を防ぎました。少林寺は金庸ワールドのなかでも名門中の名門で武芸に深い歴史があるそうです。

わたしは小学校、中学校に少林寺拳法の習い事をしていましたが、当然ですが技は全然違います笑。開祖の達磨の道徳観、倫理観を学び、瞑想をする点は似ています。

余談

令狐冲の魅力を引き立てる女性

・岳霊珊

・五毒教の教主

・仁盈盈

・恒山派一行

等あげられますが、なかでも儀林は令狐冲の魅力を引き立てるという点でかなり貢献しているでしょう。

射鵰英雄伝の郭清でいえばコジン。

神雕侠侶の楊過でいえば……陸無双、陸程英、郭襄、公孫緑樂等(モテすぎ)

このように主人公×ヒロインだけでなく、彼らを引き立てるための存在がいます。

他へ行ったらメイン張れるよってレベルの脇役勢ですが、ヒロインはやはりその上をいきますね。金庸のキャラクターの掘り下げ方、魅力の映し方はとても参考になります。

読了までにかかった時間:約4時間

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