作者:金庸
翻訳:岡崎由美
初版:1967年(原作)
原題:秘曲 笑傲江湖
全7巻
前回に続き第六巻のレビューとなります。
感想(ネタバレあり)
東 方 不 敗
第六巻の見どころといえばやはりこの人!(もはや人なのか?)
インパクト強すぎましたね。
武林で敗北を知らず、魔教の教主としてその存在は会話のなかに度々登場してきました。しかし、第六巻にしてようやく登場したときの衝撃といったら、、
まず東方不敗はオカマでした。刺繍をしている彼(彼女)の姿が令狐冲の初見だったのです。
仁我行、令狐冲、向門天、仁盈盈といった江湖でも指折りの武芸者が四人がかりでも、東方不敗の疾さについてこれず、防戦一方でやられてしまいます。裏返った声で令狐冲の剣法を「あらっ、剣法はすごいのね」と褒める姿は異様としか言えません。
しかし、機転を利かせた仁盈盈が楊蓮亭というヒゲモジャの男を人質に取ります。東方不敗は楊蓮亭に恋をしていました。人質作戦は見事功を奏し、東方不敗を打ち取ることができたのです。
普段裏声で話す東方不敗でしたが、「私は奸計にはまらなければ最強だったよな……?」と我に帰ったようにドスの聞いた声で仁我行に問いただす姿もまた恐ろしいものでした。
種を明かすと、東方不敗の強さの秘密は『葵花法典』によるもの。その極意を得るには「去勢をすること」が第一条件だったのです。
葵花法典の暖簾分けのような存在で辟邪剣譜があります。
五嶽剣派合併の儀に令狐冲は華山派一行と顔をあわせます。岳不群、林平之の様子がどうもオカシイ……。華奢な出で立ちで声が裏返っています。佐冷禅は岳不群と剣を交えることになり、今までの実力からみて勝負は決しているように見えました。五巻で岳不群は令狐冲にキックをしますが、逆に骨が折れてしまう様子もありました。
ところが突如岳不群は君子剣とは言い難い迅速で悪辣な動きをもって佐冷禅の目を潰してしまいます。その異様な疾さに令狐冲、仁盈盈は驚いて目を合わせてこう言います。「東方不敗!」
強さの代償ってなんなのか考えさせられる六巻でした。
ここ最近は寝る前に「風清楊vs東方不敗」を妄想しています。
さらに独孤求敗、葵花法典作者、少林寺の始祖、龍象般若功作者といった根源的な最強人物たちの夢のバトルを繰り広げるのが楽しいです。
読了までにかかった時間:約4時間