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秘曲 笑傲江湖 第四巻 レビュー

基本情報

作者:金庸

翻訳:岡崎由美

初版:1967年(原作)

原題:秘曲 笑傲江湖

全7巻

前回に続き第四巻のレビューとなります。

令狐冲の体内で暴れる八つの気を鎮火させるために、

少林寺の方証大師は秘伝の奥義である易筋経を令狐冲に授けようとします。

少林寺の秘宝をなぜ外部の人間である令狐冲に授けようとしたのか……。それは、仁盈盈が「自分はどうなってもいいから令狐冲を助けてあげてください」と己の命を投げうって差し出した命の対価でした。(10年の監禁と引き換え)

そうとも知らず、令狐冲は易筋経を学ぶとなると少林寺に入門しなければならないために断ります。崋山派から破門を言い渡され、岳霊珊にふられてしまった令狐冲は生きていてもしょうがない心持ちのままでした。

少林寺から抜け出して、小さな飲み屋で魔教の幹部向問天と出会います。

向問天は追われている身でありますが、令狐冲は見返りを求めず大多数に追い詰められている彼を救おうとします。理由は多人数相手に一人の老人を追い詰めることが理不尽で卑怯であるから。ところが向門天は鬼神の如き素早い動きと底知れない内功をもって弱り果てた令狐冲を抱えながら窮地を抜け出してしまいます。

感想(ネタバレあり)

向門天おじさんとの冒険の始まりです。

窮地を抜け出し、二人がたどり着いたのはある梅荘でした。そこには4人の達人クラスの主人が住んでいました。全員がそれぞれ異なる趣味に取り憑かれており、とにかくキャラが強いのなんの。4人の達人は向門天が持ってきたお宝を欲しがります。(お酒、囲碁、書画、楽譜)

しかし、そんな4人が看守として地下牢に閉じ込めていた存在は、彼らの個性を消し飛ばすレベルの怪物だったのです。メインディッシュだと思っていた連中が、実は前菜だった。みたいなすごい展開です。

向門天の目的はその怪物を復活させること。怪物の正体は前魔境の教主「仁我行」です。あのツンデレで残虐な美女:仁盈盈の父親だったのです。

仁我行はかつて東方不敗に騙され、湖底の地下牢に十数年閉じ込められていました。頭脳、武芸、覇気、全てを兼ね備えた恐るべき存在。江湖に仁我行が復活したら大多数の死者が出ると言われています。

令狐冲は成り行きで仁我行と剣の勝負をすることになり、そして向門天に闇討ちをされて身の上をすり替えられてしまいます。

そこから三ヶ月地下牢で過ごします。

地下牢生活の折、真っ暗で何も見えないなか、食器の縁に文字が彫られていることに気が付きます。それは相手の内力を自分のものに吸収してしまう恐ろしい技「吸星大法」の技が記されていたのでした。令狐冲は既に内力が失われており、さらに己の精神はいつ死んでも構わないといった渇力のない状態でした。その二つの条件が見事吸星大法を習得するうえで功を奏して、ついに己のなかで暴れている内力を拡散し、自分のものにすることができます。

吸星大法を使って、看守の内力を吸い取ってそこから身をすり替えた令狐冲は梅荘から抜け出します。独孤九剣のほかに、壮大な内功も兼ね備えた令狐冲はこの時点で五嶽剣派の総帥レベルまで力がついたことでしょう。

笑傲江湖の魅力は、一巻からずっと右肩上がりに話が気になり、面白くなっていくところです。先が気になって仕方がありません。

乞食のふりをした男装美女だったり、おばあさんだと思いこんで接していた人が魔境の姫だったり、金庸が人を形容するときの演出方法は振り子のように派手で極端ですね。

それに、闘いが必ずしも武功が勝る=勝利につながるとは限らないところが好きです。情に負けたり、正義を通そうとするうえで騙しうちされたり、想い人が相手だったり、と様々な人間の感情が闘いのなかに反映されているところが魅力的です。

読了までにかかった時間:約4時間

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