著者:フョードル・ドストエフスキー、イワン・ツルゲーネフ、頼経康史
ナレーター:遊佐浩二、沢城みゆき、浅沼晋太郎、たなかこころ、長谷川すぐみ、佐々木義人
再生時間:1時間11分(71分)
注意!約35分で終わります
罪と罰/はつ恋 2つの物語がセットになっています。
「罪と罰」はドストエフスキー。「はつ恋」はツルゲーネフ。
著者は別々なのでご注意ください。
各作品が約35分と短いので、話の展開はかなり駆け足です。ダイジェスト版と割り切って購入すると良いでしょう。
罪と罰
ボクにとって罪と罰の魅力はソーニャの神々しさにあります。
鬱屈した環境の中で人間不信に陥り罪を犯してしまう主人公に対して、暖かく抱擁してくれるあの母性は現実ではまずお目にかかれるものではありません。
ソーニャは貧しい生活のために娼婦に身を落としながらも、心は清らかなままなのです。それはキリスト教の価値観が彼女の精神の土台にあるためですが、こんな若く美しい女性が貧しい環境に追い込まれても矜持を保ち続ける姿はまさに聖母の生まれ変わりとさえ錯覚してしまいます。
暗闇の中だからこそ、光は強く輝いて見える。ソーニャはそんな印象を与えるキャラクターです。
ソーニャ役を担当したのは沢城みゆきさん。安心安全の実力派の女性の声優さんです。
もう一度言います。安心安全の実力派の女性の声優さんです。
前回の轍を踏まないようにナレーターを要チェックして購入した甲斐がありましたよ。
沢城みゆき版のソーニャ、清楚な声色でとても良かったです。
ソーニャまでオカマだったらボクは乾いた笑いをして再生停止をしていたと思います。
オカマショックが気になる方はこちらの記事をご覧ください。
物語自体は約30分でまとめなければならないので駿馬の如く超駆け足です。しかし、話の流れは一つの線としてしっかりと繋がって展開していきます。ソーニャの魅力も十分に描写されていました。
初めての方でも大筋はきっちり理解できると内容です。よく30分にまとめたなと拍手したいです。
ただ一点!残念なところがあります。
それは各ナレーターの音量バランスがバラバラなところです。
電車の中で聞いていたのですが、声が聞こえるキャラと、音量をめいいっぱい上げないと聞こえないキャラで分かれていました。基本的に主人公のラスコーリニコフの音は大きいです。それに合わせると、他の役の声が小さくて聞き取りにくい箇所が多々ありました。物語もキャスティングも申し分ないだけに、惜しいです。
「海外の古典文学の名作」と聞くと、構えてしまいがちですが、たった30分ちょっとで終わります。逆に時間を忘れてもっと聞きたくなるくらい物語に吸引力があります。
罪と罰の入門としてオススメしたい一品です。
個人的評価 | 65点 |
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物語 | |
ナレーション |
はつ恋
主人公がある手紙をきっかけに、かつてのはつ恋を振り返るストーリー。
罪と罰がメインでこっちはおまけ。と思って聞いていましたがこちらもかなり良かった!いやむしろこっちの方が良かった!
当時16歳の主人公は隣に引っ越してきた5歳年上のジナイーダという美しい女性に恋をします。
そのジナイーダはいわゆる無邪気な天然悪女だったのです。自分の魅力に取り憑かれた人たちを集めてゲームをしたり、どこが好きなのかと男性に気持ちを無理に吐かせたりしていました。
そしてその魅力に抗うことができない男性陣も彼女とのやりとりを楽しんでいる様子でした。
コケティッシュと形容されますが、現代向けに彼女を表現すると「マドンナ」、「オタサーの姫」、「ビッチ」という言葉に置き換えることができるのではないでしょうか。
ジナイーダという蠱惑的な女性に振り回されるうぶな心を持つ童貞感丸出しの主人公は、悲しいことにボク自身の苦い恋愛経験を思い起こさせるようで物語への引き込まれ方が尋常じゃありません。。
ジナイーダのような女性は今でも間違いなく存在します。いくら性格が悪くて腹黒でも、彼女の溢れる魅力に抗うことができない男たち、理解できてしまいます。頭では性格が悪いことを理解していても、無邪気な魅力にどうしても敵わないのです。本能は理性よりも強い。しかしそれは閉じ込められたコミュニティだから起こる現象なのかもしれません。当たり前ですが世界にはいろんな人がいます。
作中に登場する「私は強引に引っ張って導いてくれる人が好き!」といったセリフは今でも耳にする女性の言葉です。
著者のイワン・ツルゲーネフに妙な親近感を持って没入してしまった作品でした。やはり文豪は人間の観察力がズバ抜けてるんだなと思わされました。
罪と罰は音量バランスがおかしかったのですが、こちらは問題なく聞くことができます。ただ主人公の父親の声が若すぎたかも、叫んだ時が特に。
個人的評価 | 80点 |
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物語 | |
ナレーション |