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ドラマ版:笑傲江湖(2001)レビュー

基本情報

原作:金庸

プロデューサー:張紀中

監督:黄健中

出演:李亞鵬、許晴、巍子

公開:2001

全40話

かんたん紹介

武侠小説の名作「笑傲江湖」の2001年ドラマ版です

この記事では多くのネタバレを含みますのでご注意ください。

Good point

主人公とヒロインに特化したオリジナルストーリー

ドラマ版では原作にはない、オリジナルのストーリーがあります。

物語の序盤から令狐冲と任盈盈の絡みがあり、それがとても良かったです。(原作では三巻で出会います)

とにかく令狐冲=李亞鵬と任盈盈=許晴がとても役にハマっている!
特に任盈盈の人が良い……! この役者さんは原作の金庸先生も褒めていたとか。

任盈盈といえば、金庸作品に数多く登場する魅力あふれるツンデレキャラの中でも最も人気の高いツンデレと言える存在です。

令狐冲の言葉の節々で表情を変えるザ・ツンデレキャラの潤いのある表情が本当に素晴らしかったです。

お気に入りは、令狐冲が一芝居売って任盈盈に娼婦役の女性として声をかけたら、まさかそれに答えて演技したところです。まさかの反応で令狐冲が思わず酒を吹き出したところはとてもおもしろかったです。(あとで二人になったとき、任盈盈にキツく睨まれたのは言うまでもありません)

また、仁我行が「私が武林で尊敬する3人」に風清楊の名をあげたとき、身を潜めていた令狐冲が嬉しそうに顔を輝かせるさり気ない1シーンが好きでした。

そんなオリジナルストーリーが光るドラマ版でした。

オカマキャラ達の熱い演技

辟邪剣譜とえば、江湖に名を轟かせる最強最速の武功です。

その辟邪剣譜を巡って、様々な登場人物が陰謀を巡らせて入手します。

しかし辟邪剣譜を習得するための第一歩は、去勢をしなければなりません。

笑傲江湖の世界では去勢をすると女性ホルモンを打ったように声が高くなり、男性が好きになり、ヒゲが薄くなったりするみたいです。

東方不敗を始め、岳不群、林平之の常軌を逸した姿が印象的でした。特に日本語訳の林平之の演技がすごく良かったです。「それっ↑」と馬の手綱を引くシーンで、完全に声が裏返っていてプロの技量を感じました。

ラストバトルが原作より良い

原作では日月神教の仁我行は吸星大法の副作用で亡くなり、向門天が教主になり、日月神教はそこで争いを止めることになります。つまり日月神教vs五嶽剣派の戦争は自然消滅する形になるのです。

ところが、ドラマ版は日月神教vs五嶽剣派という構図が進みます。
実際は仁我行・向門天・仁盈盈vs岳不群です。

達人3人vs岳不群。死闘の果てに岳不群が仁我行を殺し、向問天の片腕を切り落とし、仁盈盈を傷つけます。

最後に立っていた岳不群は「武林で最強はこの私だ!」と野望を達成した歓声を響かせます。

令狐冲はその恐ろしい惨状を目の当たりにしました。

仁我行の亡骸、義兄弟である向問天の苦痛に滲ませた表情、愛する仁盈盈の傷ついた姿。

今まで何度も裏切られ濡れ衣を着せられても、育ててくれた恩義を忘れず、岳不群を父のように想い続けた心根の優しい令狐冲が、遂に剣を抜くのです。

その後に挿入歌がかかり、怒涛の展開で斬り合いが始まります。

ついに独孤九剣が辟邪剣法を打ち破り、転倒した岳不群に剣を突きつけます。

一度降参した岳不群。しかしやはり岳不群。背を向けた令狐冲に不意打ちを仕掛けようと襲いかかります。

結局、周りの応援と吸星大法で令狐冲は岳不群を倒しました。

この物語のポイントは、野心など持たず、本当は誰とも闘いたくない令狐冲が勝利することです。つまりハッピーエンド。

EDが地味に好き

よくわからないおっさん達の掛け声から始まり、

途中から恐ろしく美しい旋律が女性の歌声から発せられ、

最後にまたおっさんたちの掛け声で締めくくられる。

この歌の構成自体も面白くて好きですが、ED中に展開される笑傲江湖のダイジェスト映像みたいなものがカッコいいです!

令狐冲最高!

Bad point

原作を知っていることが前提の映像

これは他の金庸原作のドラマ版にも言えることですが、
内容が変なところで省いているシーンが多いです。ドラマ版が初めてで笑傲江湖の面白さを十分に理解するのは難しいのではないかと思いました。東方不敗も女性ですしね。

原作を読んでいること前提で話が進んでいると思う箇所がありました。

また、原作を読んでいればわかるのですが、ドラマ版だと誰が強いのか序列が分かりづらかったです。

例えば、辟邪剣譜を習得していない岳不群と左冷禅では左冷禅>>壁>>岳不群というくらいの開きがあります。
ところが、ドラマ版の強さは印象でしか語られておらず、岳不群が強いのか弱いのかわからない状態が続いていました。

色彩に欠ける映像

ざっくり言うと、全体的に緑と茶色で映像が構成されています。

良く言えば統一感があるといえますが、個人的には色彩に欠ける印象で映像自体を楽しむことがあまりできませんでした。

役者がイメージと違った

令狐冲、仁盈盈、岳不群、向門天あたりはとても良かったのですが、それ以外はピンと来ませんでした。

仁我行はもっと巨体で筋骨隆々の厳ついおっさんを想像していましたが、ドラマではちょっと中太りのおじさんでした。

左冷禅は細身で白髪の老剣士のようなイメージでしたが、ドラマでは黒髪ロングで小太りのおじさんでした。

もう少しイメージに近ければ良かったなと思いました。

効果音がしょぼい

特に軽功を使うときに鳥が羽ばたくような「バサバサバサッ」という音がしますが、これが戦闘のテンポを落とすような印象を与えている気がします。それに多用しているところもよくないです。

独孤九剣の「キィィン」は好きでした。

独孤求敗はどんな人物だったのか

私の好きなキャラクターは楊過と令狐冲です。

この二人に共通するものはどちらも政治的な人間ではないということです。自由奔放に生きるのが好きなのだとわかります。
私は彼らの価値観に感情移入してしまいます。

そして、二人とも独孤求敗の力を身に着けています。楊過は独孤求敗の内功を。令狐冲は独孤求敗の剣技を。

楊過に独孤求敗の修行法を教えたのは神雕でした。もしかしたら神雕は、独孤求敗の面影を楊過に見出していたのかもしれません。令狐冲も独孤九剣を身に付けたというのは、独孤求敗と共通するものがあるから「縁」があったのではないでしょうか。

それはやはり、隠士という生き方に根ざした価値観という気がするのです。

もしかしたら独孤求敗も隠士の価値観を持つ最強の剣士だったのかもしれません。(名前と矛盾している気もしますが)

感想

原作自体がとても完成度の高い作品なので、ドラマ版も面白かったです。

ですが、悪いところでも書いたとおり「原作を知っていること前提」のドラマ版だと思います。

笑傲江湖の原作が面白かったという人は、ぜひ観てほしいです。

個人的評価70点
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音楽
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